教育情報(1) 「生きる力」について
(平成15年度「文部科学白書」より)
これからの子どもたちに求められるのは、知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や、自分で課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力などの「確かな学力」や、他人を思いやる心や感動する心などの「豊かな人間性」、たくましく生きるための「健康や体力」などの「生きる力」を身につけることである。
この「生きる力」の概念図が、平成15年度の「文部科学白書」に紹介されている。
教育情報(2) 文部科学白書に見る教育の構造改革の理念
平成十五年度の「文部科学白書」が、去る二月二十日に発行された。第一部と第二部で構成され、475ページにわたる。
昨年は学校完全五日制の実施と、それに伴う学習内容の削減が学力低下への不安を招きかねないとの懸念が社会の話題となり、発行即日に主要新聞では、社説などに論評を寄せたが、今年は特に論評記事を目にしない。
昨年は特集テーマとして、「新しい時代の学校 ~進む初等中等教育改革~」を取りあげた。今次の十五年度版では、特集テーマとして、「創造的活力に富んだ知識基盤社会を支える高等教育~高等教育改革の新展開~」を取り上げている。
巻頭の「刊行に寄せて」の中で、河村文部科学大臣は「現代は、新しい技術や情報が経済活動をはじめ社会の様々な活動の基盤となる『知識基盤社会』である」とし、「情報が瞬時にして世界を駆け巡り、国家間の競争と協調が重要となり、『知の創造と継承』が社会の発展の鍵となる時代を迎えているので、大学をはじめとする高等教育機関は、こうした時代を支える『知の拠点』として、その重要性が一層増加している」と述べている。
いずれにせよ昨年の “進む初等中等教育改革”から、今次の“ 高等教育改革の新展開”へと初等中等教育から大学までを通じた教育の構造改革の取り組みが述べられてきた。そしてそれは、「画一と受身から自立と創造へ」という基本理念の下、知育、徳育、体育、食育を重視した「人間力」の涵養を目指していると言う。
実は昨年五月、遠山前文部科学大臣時代に文部省が進める急ぎ足の「改革」が学校現場の多忙化や混乱を招いているとの批判に対して、改革の全体像を現場にわかって貰うため、「画一と受身から自立と創造へ」とうたい、文科省の取り組みを四つの理念で整理し、理解を求めているのである。このことは本年度の総会における文科省の祝辞にも触れられているし、また先の副会長会で文科省に玉井総括審議官を訪ねた懇談の席上でも同審議官よりくわしく説明を受けたことは、「副会長会の報告」の中でも触れられている。
その四つの理念は、
(1)一人一人の個性と能力に応じた学校教育の展開など「個性」と「能力」の尊重
(2)国際社会の一員としての教養ある日本人の育成など「社会性」と「国際性」の涵養
(3)学校や地域が個性あふれる学校づくりをして、ニーズに応えるための「選択」と「多様性」の重視
(4) 学校が説明責任を果たすとともに教育の質を評価によって保証する「公開」と「評価」の推進である。
文科省はメッセージを載せたパンフレットを作っているが、そのパンフレットは、「一人の子どもが生ををうけ、成長していく間には、小・中・高等学校、大学等、さらには卒業後の生涯学習と、いくつもの段階を通じて学びます。しかし、それぞれの学校段階はそれのみで完結するわけではありません。大切なことは、それらを通じて、教育に携わる全ての関係者が心を一つにして、一人一人の子どもたちを “新しい時代を切りひらく心豊かでたくましい日本人”として育てるとの高い志をもち、最善を尽くすことでありましょう。」と述べ、未来を担う子どもたちのために、教育関係者はもとより、広く国民が、それぞれの場で、愛情と熱意をもって取り組んで貰えるよう心から期待して結びとしている。
(会報部)
(参考)
・文部科学白書(平成14・15年度)
・教育の構造改革(パンフレット) 平成15年5月・文部科学省