抜粋内容
巻頭言 「教育の日」更に前進を 副会長 鵜川安雄
〔提言〕
義務教育の質の二極化 副会長 林信次
〔提言〕
会員数の増確保について 副会長 鮫島幸雄
〔全連退情報〕
全国校園長会会長との連絡会(報告)
副会長会の報告
「全連退の歌」の“歌詞”決まる
「教育の日」のポスター・横断幕の活用を
巻頭言 「教育の日」更に前進を 副会長 鵜川安雄
副会長 鵜川安雄
「教育の日」の制定にかかわる運動が、ようやく全国的なものになろうとしている。
このことは、全国連合退職校長会が、その目標の第一に掲げて、国民運動の展開に大いに努めていることの現れと、喜ばしく感じるところである。
ところで、「教育の日」の制定の在り方には、条例に依るものとそれに依らないものとがある。いずれにしても、いまのところ問題はないし、それが確実に拡がりを見せていることの方が重要であろう。もちろん、この運動は、退職校長会のみのものではなく、広く教育関係諸団体の間にも拡がっている。更にそれに、さまざまな団体が加わって「制定推進委員会」的な組織を作り、広い活動になっていることに意味がある。つまり、その運動の拡がりと高まり自体が、わが国の教育尊重の気運を高めているといえるからである。
ところで、ここでもう一度、「教育の日」制定の意義を確認しなければならない。私たちの直接の目標は、「教育の日」の制定であるが、その意義はそのことを通じて国民の間に教育尊重の気運を高めることにある。従って、当然のことながら、ある日を「教育の日」と定め、ある種のイベントをすることのみを想定しては進路を誤ることになる。「日」の制定や事業的なものは、あくまでも手段であって、本来の意味での「教育の日」は,その中身についての十分な検討が必要である。ところで、その制定が拡がりを見せつつも、解決しなければならない課題も多い。教育関係者のみではなく都道府県民の意識の高揚の在り方、諸経費の問題、さまざまな団体の意見の集約、現在実施されている教育関係の諸事情との調整の問題等である。更にまた、緊迫する国際情勢や混乱する政治経済社会のはざまの中に教育問題が埋没する可能性もないとはいえない。
しかし、将来の日本を考えるとき、どのような課題や隘路があろうとも、まずは暦に祝日として「教育の日」が記載されるために、更に一歩を進めなくてはならない。
〔提言〕義務教育の質の二極化 副会長 林信次
副会長 林信次
多様な論議と数多い課題を内包しながらも、二十一世紀に生きる日本の在り方を指向した教育改革は、実践一年目を迎えた。
これらを展望して、本年二月文部科学白書では、新学習指導要領を導入した小中の教育を取り上げ、昨年実施された全国規模の学力調査や国際比較調査により、学力低下問題等について分析し、公表している。
これらの側面に、多様な教育機会と選択の拡大等を求めた改革の追い風とも言われている、「構造改革特区構想」がある。
民間企業の学校経営、公設民営校や不登校者対象校の設立、独自教育枠や採用、英語習得一貫校設立等、教育制度に関わる規制緩和を中軸とした、多岐に亘る発想が提言されている。
しかし、特区構想は財源措置をしないのが原則とされており地方分権との関わりの中で、自治体の財政的な裏付けの不安や都市と地方の競争力の違いも大きな課題である。
国庫負担制度や無償原則など義務教育の持つ、歴史的な意義も配慮に入れるべきであろう。
義務教育(公教育)の役割の一つは、親の学歴や経済力、社会的地位に関係なく、質の高い教育を平等に全国民に保障する側面をもつ。学歴、学力と財力の関わりでは、東大生の親の年収平均は、他の国公大に比べ最高である事は周知のことで、有名私学、一貫校への志向や通塾等、受験学力競争と共に、子供の能力が同等なら、親の財力が極め手になりかねぬ現状がある。
多様な教育機会の拡充が先行し、競争原理の導入、特色ある学校等、選択の幅の拡大は必然の動向だが、義務教育の「質」の二極化は等閑に出来ない。
〔提言〕会員数の増確保について 副会長 鮫島幸雄
副会長 島 幸雄
先般、副会長会に出席し、全連退会報の配布部数の総数が、10万部に達していないことを知り、いささか残念に思っている。
資料から見て、全国47都道府県で51団体の全国組織である全連退の総合力、団結力を高め、一層の活力を発揮するためには、更なる会員数増加と確保が非常に影響力あるものと確信するものである。
私の所属する鹿児島県は、小・中・高・特殊学校の退職校長で統一され、全員数も三千もこえ全連退の中で五指の中に入っている。なお、現職校長も連合校長会として統一され、全員県退職校長会の賛助会員として、準会員名で加入している。加えて県PTAも連合体として一つに結集している。このことが退職校長会の結集力・団結力を高め加入率も100%に近い。
全連退の副会長会の協議で、殆どの県で準会員制があると報告がなされている。
私達は、永年教師とし、校長とし教育に携わった人達の集まりである。この第三の教育改革といわれる大事な時期に、その影響力を一層強めるためにも、今一度一致協力し団結する必要がある。
各県の組織の構成員をみると特定の出身校別に偏ったり、少人数の組織などが見られる。これらの県では組織成立に至る経緯等から、難しい条件下にあることは理解されるが、なお努力する必要があるのではないか。
いますぐ手懸けられる方策として、準会員制度を利用しての確保がある。会員加入への強い運動を起こすべき時、お互いのコミュニケーションを大事にして効果ある活動を期待する。
全連退本部としても、一層努力されるよう要望したい。
〔全連退情報〕全国校園長会会長との連絡会(報告)
恒例の「全国現職校園長会会長との連絡会」を、今年度は全会長同席で実施した。
「全連退」は、校種ごとの重要課題や要望事項を伺い、可能な限りそれらを側面から支援していく姿勢で、それらの解決に取り組んでいる。
○期日 平成15年1月11日(土)
○場所 東京都世田谷区八幡中学校会議室
○出席者
全国国公立幼稚園長会 会長 斎藤實先生
全国連合小学校長会 会長 西村佐二先生
全日本中学校長会 会長 星正雄先生
全国高等学校長協会 会長 千田捷煕先生
全国特殊学校長会 会長 宮崎英憲先生
本会からは、土橋会長以下各部長及び事務局職員が出席した。
会長あいさつ(要旨)
規制改革の推進に伴う教育での多様化・弾力化にかかわって、各種の問題論議のある中でわれわれはこれまでの教職経験を課題に向け役立て、恩返しの気持ちで活動を続けている。
本会が「教育の日」の制定に努力しているが、次代国民の育成のため心を向けられたい。
以下〔各校園長会の課題と現状〕 (説明要旨)
〔全国国公立幼稚園長会〕
本来学校である幼稚園が、福祉分野で論じられることが多い。少子化現象と相まって、それは当然幼保一体運営論の方向での検討に濃さを増している。そのため、
○教育機関たる学校としての役割の明確化、幼小の関連など保護者の声も含め、一層各方面にPRしていく。
○「親の子育て支援」が求められているが、それは親の子育ての肩代わりではなく、親の教育力を高める方向での対処が必要である。
〔全国連合小学校長会〕
本来学校である幼稚園が、福祉分野で論じられることが多い。少子化現象と相まって、それは当然幼保一体運営論の方向での検討に濃さを増している。そのため、
○教育機関たる学校としての役割の明確化、幼小の関連など保護者の声も含め、一層各方面にPRしていく。
○「親の子育て支援」が求められているが、それは親の子育ての肩代わりではなく、親の教育力を高める方向での対処が必要である。
〔全日本中学校長会〕
国の動向と教育については、一つには行財政改革に関連する規制緩和、地方分権などに伴う教育への自由化といった大きな側面と、文部科学省を中心とした21世紀をめざした各種の教育改革、それに伴う課題等が考えられる。
○行財政改革、規制緩和政策に関わっては、義務教育費国庫負担制度の堅持について要望し、さらには「特区」への株式会社参入への反対を表明した。
○中央教育審議会へ教育基本法改定につき、国の教育指針としての重みを持ち、国民の目との結びつきを大切にすべく意見表明をした。
○16年度「新教員給与策定」について、各地区一般行政職給与と同等以上の優遇性の確保を意見表明した。
○新教育課程の充実・推進に関わっては、各種の研究会及び研究協議会(島根大会)、研究調査活動などのほか、絶対評価への転換に伴う各教科評価規準例の作成(発行)、特色ある運動部活動の実践例、新しい週案作成(発行)などの活動があげられる。
○学力論に押されての土曜授業の実体とか、総合学習にかかわっての問題、さらには小学校よりの生徒数確保についての公私間の現状など課題は多いが、校長の意識を高め一層の協力体制に立って邁進していきたい。
〔全日本中学校長会〕
国の行財政改革に関連する規制緩和、地方分権などに伴う教育への自由化といった大きな側面と、文部科学省を中心とした21世紀をめざした各種の教育改革、それに伴う課題等が考えられる。
○これらに関連して、義務教育費国庫負担制度の堅持について要望し、さらには「特区」への株式会社参入への反対を表明した。
○中央教育審議会へ教育基本法改定につき、国の教育指針としての重みを持ち、国民の目との結びつきを大切にすべく意見表明をした。
○16年度「新教員給与策定」について、各地区一般行政職給与と同等以上の優遇性の確保を意見表明した。
〔全国高等学校長協会〕
21世紀は「人間力」の育成が大切で、またそれぞれの場所で活躍でき、リーダーとして生きがいをつくり出せる子どもの育成と同時に国際的場面でも日本人として自己を語れるような共生の精神が求められる。
さらには、学校の枠組が流動化、弾力化しつつある今日、幼稚園から大学までの相互の連携と共に家庭、地域との連携も大切。ただその前提として学校の主体性の確立が大切である。次に、当面する諸課題として、
○完全学校週五日制では、学力の維持・向上、「学習力」の向上が必要と考える。そのため、週休日の活用など創意工夫に努めているが、教員の代休措置、災害補償措置など行政に対し、その補償確保に努力している。
○新学習指導要領の実施に関しては「総合的な学習の時間」「情報」「体験的学習機会の拡大」などが組み込まれてきたが、単なる暗記的な知識の集積だけでなく、真に身につき、明日の生きる力につながるような知識、知恵、知能の確保に努めたい。また五日制は、「ゆとり」の具現化であった筈だが実体は多忙化の傾向さえ見られる。
○進路指導では大学進学、特にセンター試験に関連し「使える英語力の向上」に配慮していきたい。また就職内定率が最低の現状から、就職指導の慣例・慣行の見直しが求められる。
○高校入試に関しての絶対評価の問題は、きちっと問題点を洗い出し、解決の方策を見出さないと混乱し、生徒に被害の及ぶ恐れもある。
〔全国特殊学校長会〕
平成14年10月に文部科学省の調査研究協力者会議から発表された「特別支援教育の在り方について(中間まとめ)」がある。そこでは今後の適切な教育的対応、つまり特別支援教育の推進の必要性が提唱されている。その推進上での今後の在り方として
○盲・聾・養護学校を一元化して障害種にとらわれない特別支援学校とする。
○これまでの特殊学校は、教育支援センター校として機能をもたせる。
○障害別の免許状の総合化(一本化)を中教審に働きかけている。
○通常学級に在籍する特別支援を要する児童生徒への適切な対応に向け、全小中学校に特別支援コーディネイター(特殊教育主任)を配置する。
○特別支援学校への転換に伴い学校教育法の関係事項を改正する。などがあげられる。
特殊教育から特別支援教育への変革は、特殊学校のみならず小中学校の意識変革も求められるものであることから、一層双方の緊密な連携協力が不可欠である。
その後、本会の各部長から現在の活動状況の説明があり、懇談に入った。
本会より「教育の日」の実施状況の報告や、とかく教育の論理より行政の論理が優先されていると思われる現在の教育状況について、お互いの課題として意識していくべきことを強調した。
いずれにせよ今回は全校園長会長より同時に会の現状と課題をお聞きでき、今後とも一層の連携応援の必要さへの認識を深めた。
(文責 会報部 中村)
副会長会の報告
「全連退の歌」の“歌詞”決まる
昨年(会報第143号)より、応募を期待していました「全連退の歌」につきましては、皆様から24点の応募をいただきありがとうございました。
昨年11月から選定委員会で選定に取り組み、12月2日・6日と最終選考に入り、慎重な審議を経て決定をみました。
選定に当っては、全連退の心を心として歌いあげたものを、字句の修正と共に、全会員になじみ易い表現やリズムを考えながら次の詩を選定いたしました。
なお作曲は、依頼した国立音大系、ならびに武蔵野音大系ともに順調に進捗中です。いずれ両者の完成を見て選定し、6月の15年度総会当日にはぜひ斉唱したいものと考えています。
(事務局・青)
全連退の歌 「光かかげて」
大越 弘
一、誇りを胸に 歩みきて
道を求めて 人つどう
先人たたえ むすびあい
教えのしるべ 見つめつつ
ともに励もう 全連退
二、光かかげて ひとすじに
世代をこえて 夢つどう
時の鼓動に ひびきあい
教えのちから おさめつつ
ともに生かそう 全連退
三、世紀の風に 抱かれて
命ふれあい 愛つどう
生きる幸せ わかちあい
教えのこころ 高めつつ
ともに進もう 全連退