はじめのことば 会 長  土 橋 荘 司

全国連合退職校長会 会長 土橋荘司

 今年も皆様の熱心な討論と理論付けで“年間活動・研究報告”が立派なものに仕上ったことに心から感謝する次第である。今度で九冊目になるが、継続することが力であることをつくづく考えさせられる。そこで、今改めて何故に報告が年の終りにまとまって出ることになったか反省してみる必要がある。主な理由は全会員へのスムースな研究情報等の伝達とその趣旨徹底をはかるために時期と量を考慮して、今までの形式で一年間の結果と事業の計画実施状況、更にその年度にはどういう主題で、時代的課題をとらえ、如何に対処していき、それを基準として将来にどう伝えるか記述して残すのが目的であった。こう見てくると年ごとに内容も目標も目指した点に近づきつつあるので、心を入れかえ慎重に対処したい。

最近の教育問題としては“教育基本法”改正に関することがあげられる。中教審も退職校長会の研究・提案の方向で進みつつあるが、結果的にはどのような形で出されるのかが問題である。一つの方向を示せば、それに対し反対する者もいて、なかなか難しいが、結局は日本国民としてのアイデンティティをどう表して行くかにあると思う。特に全体に対して“個を主張する”がその前に日本国民という巌然たる事実に基づいての個であることが大切であり、それから派生する事項をどういうように述べるかで決まる。

人間の生き方として、1人の人間がどのように生きたか。その時代の中で、時代のどのような課題を引き継ぎ果したか、あるいは、時代の重荷にどのように苦しみ、生き抜いたか、そして死んでいったか、その人は結局どんな存在であったか。人間の生と死に触れて生きる力が与えられることが多い。西田幾太郎先生は、厳しく、やさしく、鋭く生き、多くの人に人間であることの真実を教え、伝えて来た。西田先生の没後25年、“今でも先生がこわい”と弟子の西谷啓治はいっている。上田閑照は、このことに接し、深い感銘を受け、成功した本当の人間の存在に、それが真に出会われた場合には、その人の死によって消されるものでなく、死を通して、むしろ、死んだあとで深く働きかけてくる。むしろ、死してますます生きて来るのだと思う。という趣旨の感想を述べている。

これらは、強く私の心に残ることばであり、感動的な事例である。

良きもの、そして人を激励する事は、何人もこれを議論することで、自分を反省しふるい立つものであると思う。自分にこれを当てはめて考えると、今生きて何をし、何に真面目に取組むことが、世のため人のためになるかを、深く考えさせられる。

更に、組織として全連退があとあとまで、何を伝え、残していける仕事は何かを皆でよくよく熟慮し、反省すべきことを思う。

第1部  年間活動の報告 

1.総務部の活動 総 務 部

《内容のあらまし》
全連退の平成14年度の主な行事についての報告である

2.年金・叙勲・医療制度等の現状 福利厚生部

《内容のあらまし》
(1)年金制度のあらましと、繰り上げ(下げ)支給等について
(2)叙勲についての要望、新しい栄典制度について、栄典制度への要望等
(3)医療制度の改革と、医療保険について
(4)税制改革と、今後のマル優制度について
(5)長寿会員に対するお祝いの内容について
  上記のことについて述べている。

3.会報部の活動 会 報 部


  《内容のあらまし》
会員と各団体相互の理解と親近感を深める情報誌の発行について述べている。

4.出版委員会の報告

  《内容のあらまし》
“気迫ある管理が新しい学校を創る”の出版計画、内容の構成、執筆と、出版への
道筋を述べている。

5.会 計 部

6.事 務 局

第2部  調査 ・ 研究活動の報告 

7.「教育憲章」についての調査報告と事例 教育振興対策部

  《内容のあらまし》
(1)本年度の活動の概要 … 教育憲章(案)の趣旨の理解と普及について。
(2)教育憲章(案)に関する調査のまとめ(370名からの回答)。
(3)教育憲章(案)の9項目にかかる実践事例の紹介。
(4)本年度収集した事例一覧(13都県37事例)。
  上記のことについて掲載している。

8.生涯学習・教育支援活動についての調査と考察(その2)  ― 学校教育支援活動の充実を目指して ―  生涯学習推進部

  《内容のあらまし》
(1)平成13年度は、退職校長を対象にした生涯学習・教育支援活動についての調査の選択肢部分の回答のみを集計し、退職校長の生涯学習に対する考え方や教育支援活動の現状、課題を分析・考察した。
(2)本年度は、上記調査の自由記入されたことや選択肢の中の自由記入の回答を残らず集計し、その分析・考察をいっそう深めた。
   その中で、退職校長が実践している生涯学習の内容や現状、教育支援活動の現状、障害の改善策等について述べ、さらに、学校教育支援活動の場合の退職校長としての対応、解決策等を分析・考察した。
(3)過去2年間の分析・考察を基に、これからの学校教育支援活動を充実していくための提言をまとめ、掲載している。

9.「教育の日」制定の推進を目指して。―― アンケートの結果に基づいて ――    「教育の日」制定推進委員会

《内容のあらまし》
  「教育の日」に関するアンケートの集約結果を公表している。

10.「評価」について ―― 中間まとめの概要 ――     「中教審」対策委員会

  《内容のあらまし》
  平成13年4月から「評価」の在り方について研究・協議を重ねてきた。その成果をまとめて、平成14年11月に、表題の小冊子を作成し、公表した。
  この小冊子の構成・内容の概要を紹介している。

11.「教育基本法」の見直し・改正を求めて 教育基本法検討委員会

  《内容のあらまし》
(1)中央教育審議会基本問題部会に送った「改正教育基本法作成上の基本的な考え方」と「改正教育基本法」の全文を掲載している。
(2)全連退が作成した「改正教育基本法」と、中教審の「中間報告」を比較しての類似点と、今後の課題について述べている。

12.あとがき

○平成14年度の「年間活動・研究報告」を、会員各位及び教育関係諸機関・団体にお届けする。
  小誌は、各部・委員会の一年間の活動や調査・研究の過程並びにその成果を、各位にお知らせする使命を持つものである。
○今年度の小誌は、二部構成で編集した。即ち、第1部には活動報告が主な内容である部・委員会をまとめ、第2部にはアンケート調査等の回答を踏まえての研究成果や文献、資料等を参考に論議して得られた成果等を主な内容とする部・委員会をまとめてみた。アンケート調査にご協力下さった地区副会長はじめ会員各位、校長その他の多くの方々に厚くお礼申し上げる次第である。

○今年度の小誌は、ご覧のように大幅に紙数が増加している。郵送料の関係等から苦情が寄せられると考えたが、調査・研究・討議の成果がもたらしたことと、お許しいただきたい。

○例年のことであるが、小誌へのご感想、ご意見、ご叱声等が殆ど寄せられない。なんとも寂しい限りである。
  ご感想、ご意見等が、各部・委員会の研究活動等の励みの源泉になるものです。

○いよいよ平成15年度、第2期中央教育審議会が発足した。教育基本法の改正案が国会に上程される年です。構造改革特別区域法の施行により、様々な学校が現れる趨勢です。改めて「学校とは」を、考えていくことが肝要でしょう。
  「全連退」は、「新しい時代を拓く、人間性豊かで、主体性があり、たくましい日本人の育成」を目指した教育に視点を定め、調査・研究活動を重ねます。

編集委員(50音順)
相田新太郎  青宏  井上孝  小川嘉一郎  塩田禎男  渋谷安  圖子岩雄  戸張敦雄
富山保  中村鎌次  廣瀬久  藤木達三郎  目賀田八郎