抜粋内容
年頭所感 「生きもの全連退」
全国連合退職校長会 会長 戸張敦雄
全国校園長より:
・最近の国の動向と全日中
全日本中学校長会 会長 細谷 美明
・大学入試改革の行方
全国高等学校長協会 会長 及川 良一
・共生社会の実現をめざして
全国特別支援学校長会 会長 兵馬 孝周
第二回理事会報告【PDF】
文科省大臣官房審議官 山下和茂氏の講話【PDF】
DVD『熊本市戦後教育史』を作成【PDF】
国会へ初めての教育予算陳情
年頭所感 「生きもの全連退」
全国連合退職校長会 会長 戸張敦雄
全国連合退職校長会
会長 戸張敦雄
平成26年 甲午の新春をお迎えのこと 心からお祝い申し上げます
昨年は、安定してきた政権のもと、教育改革への動きが活発化してまいりました。
教育改革実行会議の数次に亘る提言等に基づき、学習指導要領の改訂(次期は平成30年であると思われますが、一部を平成27年との情報もあります)を視野に捉えた議論や協議がアップテンポで進行しています。
全国連合退職校長会(全連退)は、その使命の第一に掲げる校園長会を支援することを旨に、多くの情報・資料等を正確に読み、的確に判断し、組織としての論議を重ねて得た意見や見解を中央教育審議会等へ具申している現状です。
私は、新年を迎えた今日、全連退という生きものを3D(三次元)で考えてみました。
20世紀の初めの頃、マックス・シューラーが、その著書の中に「宇宙における人間の位置」ということを述べています。その一節に、『動物は、優れたものであっても位置ということが理解できない。例えば、比較的利口といわれているウマでも、生活している馬場や牧場の状況は分かっていても、そのどの位置にいるか、即ち、所在意識がない』といっています。
私は、このことが非常に重要であると思いました。つまり、人間にしてはじめて3D空間の中の所在意識を持つことができるのです。
私たちの住む社会は、英知的空間(または、知性的空間)であり、その3D空間に住む私たちにはそれぞれの位置があります(その位置は固定されているものではなく、局面によって上下左右に変動します)。
会長には会長の、副会長には副会長の、それぞれの局面での所在位置を承知しています。
このことが人間にとって大切なことであると思います。
そして、会員一人一人がそれぞれの位置において力を発揮し業務に尽瘁じんすいすることによって、3Dの世界での生きた全連退が充実・発展することができると考えました。
また、このような力を尽くす活動の中で得られた友人、仲間一人一人が生きもの全連退を構成しているのではないでしょうか。
どうぞこの一年、学び続け、絆を強め、心身ともに健康な日々の連続を願うとともに、健康を損ねられている方は確たる所在意識(位置)の変化を認識し、その場において可能な限りの地区や県の退職校長会へのご支援を期待し、年頭のあいさつといたします。
最近の国の動向と全日中
全日本中学校長会 会長 細谷 美明
全日本中学校長会
会長 細谷 美明
はじめに、平成26年度文科省概算要求について報告いたします。昨年度の概算要求で明示された「教職員定数改善計画」という文言や義務標準法の改正といった、35人以下学級関連の文言が予算資料からなくなったことが気になり、文科省に問い合わせしたところ、以下のことがわかりました。今年の学力・学習状況調査の結果を文科省で分析したところ、少人数学級を取り入れて学力が上がったという数値はなく、むしろ下がっている傾向がみえたそうです。反面TTあるいは習熟度別指導については学力が上がっている傾向は見られるとのことです。このことから、財務省に対し今後35人以下学級は要求できないとの結論になったそうです。
私からは学級規模を学習面のみで考えるのではなく、生徒指導面からも考えてもらいたいと要請しました。今後、全日中としましても戦略を見直さなければならないと考えます。
土曜授業については、教育委員会の判断でこれまで以上に土曜授業が拡充・推進できるよう、国は学校教育法施行規則の改正を今度の国会中に目指しているということです。ただ、文科省がイメージする土曜授業とは、教育課程内の教育活動であるが教員以外の人材を活用した教科等の授業のようです。しかし、自治体によっては教員による授業を実施するところも想定できることから、国は教員の勤務、とりわけ土曜日勤務の振替休が確実に取れるよう条例改正をするなどの条件整備を計画的に行うよう教育委員会に周知徹底する必要があるとの意見を述べてきました。今後も全連退のご協力をよろしくお願いいたします。
大学入試改革の行方
全国高等学校長協会 会長 及川 良一
全国高等学校長協会
会長 及川 良一
現在大学入試改革の議論が進んでいます。高2段階から複数回受験可能な到達度テストにより大学教育に必要な学力を確保すること、大学入試センター試験を点数ではなく「段階」で各大学に示し、その上で各大学はその成績を合否判定に利用し面接や論文などの個別の方法により意欲、能力、適性等を含めて総合的に判定するといった仕組みです。高校教育への影響は計り知れず、受験勉強の早期化に拍車がかかるのではないかといった懸念、大学は段階で示された結果で学力の把握は十分と考えるかといった疑問があります。
日本の大学入試は、旧制高校以来基本的に「振るい落とす」ための試験と言われます。志願者数に対し、収容人数(定数)が抑えられていたため、一点刻みで順番をつけて振るい落とすためのものでした。高等教育、大学教育を受けるに足る学力の把握、到達度の把握といった、個人準拠の上に立つものではありませんでした。競争率が高かった時代は、結果的に学力が担保されましたが、入試の選抜機能が低下すれば学力は低下します。
私立大学の4割以上が定数割れを起こしている現状で、振るい落とすための試験で学力を維持することはできなくなっています。したがって、大学入試に到達度テストを導入することや学力テストの結果を「段階」で示すという仕組みは、一点刻みの一発勝負的試験に学力の担保を依拠してきた日本の「試験文化」からの大転換と言えます。容易なことではありません。「やせ細る大学教育」と「底が抜けた高校教育」の接続にふさわしい仕組みが問われていると受けとめています。
共生社会の実現をめざして
全国特別支援学校長会 会長 兵馬 孝周
全国特別支援学校長会
会長 兵馬 孝周
本会は、昭和38年10月に結成された「全国特殊学校長会」が前身であり、従来の盲・聾・養護学校が特別支援学校へと転換された「学校教育法等の一部を改正する法律」が平成18年6月に成立したのを機に、平成19年6月に『全国特別支援学校長会』と改称し、平成25年度に50周年式典を行った。
さらに、平成19年の学校教育法の一部改正により「特殊教育」から「特別支援教育」へと転換されて今年度は8年目を迎えようとしている。
国においては内閣府に障害者権利条約の批准のための障害者制度改革会議が設けられ、文部科学省においては中央教育審議会初等中等教育分科会で特別支援教育のあり方に関する検討委員会やその中に設けられた合理的配慮や基礎的教育環境のワーキンググループでの議論が行なわれ、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進についての報告書がまとまり、平成26年度文部科学省の概算要求にもその内容が盛り込まれている。
本会は、このような国の動きに対応し、特別支援教育の理念や特別支援学校が果たすべき役割等について議論を重ねて内容を確かなものにするとともに、明確なビジョンをもって特別支援教育の振興を図るために、全国特別支援学校長会としての課題と取り組みを共有する全特長ビジョン『共生社会の礎を築く』を策定し、公表した。
今後一層、積極的に他の校長会や障害者団体、支援団体、研究団体等と連携しつつ、特別支援教育の推進を図っていくことがますます重要になると考えている。