抜粋内容

巻頭言 「温故」 
全国連合退職校長会 副会長(東京地区) 太田 秀

「みやざきの教育の日」制定を目指して
宮崎県 会長 冨永憲一

若手教員のニーズに応える研修会(報告)
日常に役立つ課題解決のヒントを探ろう

【PDF】地方の会報誌より
・教育現場の応援団として活躍される会に感謝
長野県 会長 高橋基
・ろうそくを支える燭台
新潟県 会長 水野 文紀
・継続は力 -喜多院の出会い-
川越 鯨井愛子

共済年金受給者団体幹事会に出席して(報告)
福利厚生部長 前田徹

中央教育審議会並びに特別部会を傍聴して(報告)
教育課題委員長 田中昭光

巻頭言 「温故」 
   全国連合退職校長会 副会長(東京地区) 太田 秀

全国連合退職校長会
副会長(東京地区) 太田 秀

年度区切りの時期、新会員への加入を勧誘していく活動の中で、全連退への認識が十分ではないと思われる場面に何度か出合った。

前号会報に戸張会長代行の巻頭言「温故創新」が掲載された。ここでは、全連退設立時の意気を温たずねて「創新」に備えたい。

全連退創設を願った先輩たちの想いが、昭和三十五年発行の都退職校長会報記事に見られる勤評闘争が熾烈になったのがきっかけとなって、既に引退した吾々としても、教育界の現状を只安閑と見るに忍びず…親睦会だけに終わらずして、有意義な会の運営を考慮することに意見がまとまり…(原文のまま)
とある。

全連退が結成されたのが、昭和四十年である。この間の先輩方の想いや活動を紹介したい。勤評、全国一斉学力テストの実施等への教組の闘争で世情不安・混乱の時代であった。都退職校長会は次のような「教育正常化に関する声明」を公表している。〝最近わが国の教育に関する諸問題は、ほとんど事毎に政争の渦中に投ぜられ、学校教育に甚だしい混乱を来し、大なる社会問題として国民の不安を招き、延ひいては教育に対する内外の不信にまで発展せんとする情勢にあることは、真に痛心の至りでわれ等の到底黙視するに忍びないところである…

当時、教育界の混迷や憂慮すべき問題は山積していた。この声明にある諸問題解決は、一部の地方だけの努力で成果を得ることは不可能である。先輩方は、全国道府県の退職校長会と連絡をとり合い、相携えて全連退の結成や世論の喚起に乗り出した。これが昭和三十九年である。つまり、都退職校長会は必要に迫られて全連退を産み出そうと模索したのである。

全連退結成への努力は、物心両面にわたって容易なものでなかった様子が記録に残されている。結成までの過程で
●政治的に厳正中立を堅持し、いずれの政党にも偏しない
●都道府県ごとに小中高その他の公立学校退職校長を一本化する
●少数精鋭主義をとらない等の性格が形づくられてきたのである。

設立から四十六年を経た今、全連退を上意下達の機関と誤解する向きがあるのは残念である。「温故」して、全国都道府県の退職校長会が結束し、山積する教育諸課題に対していきたい。

「みやざきの教育の日」制定を目指して
   宮崎県 会長 冨永憲一

宮崎県 会長 冨永憲一

平成17年宮崎県退職校長会は「教育の日」制定をめざして活動を開始した。関係機関諸団体との折衝(19回)を実施し宮崎県教育委員会は19年度から毎年10月第三日曜日(家庭の日)以降「みやざき子ども教育週間」と定め子どもの教育に対する啓発に努め、平成18年から三年間県教委主催の小中学生の活動を取り入れた行事が行われた。それ以後は各地区に委ねられることになったが、次に主な地区での行事を紹介する。

1、宮崎市高岡町教育の日合
同穆ぼく園学習会平成11年以来高木兼寛生誕150周年を契機にふるさと教育推進事業の設立によって町内四校の合同学習会を実施することにより、ふるさとを知り、ふるさとを愛し、ふるさとに誇りをもたせる教育活動の推進と定着を目的として実施されている。平成22年で第九回を数える会の内容は、特別大使(慈恵医大との交流)報告、表彰、伝統芸能紹介、劇「高木兼寛」、合唱、合奏、期日は毎年10月第三土曜日が予定されている。

2、日向支部「教育を考える研修会」
日向地区「教育を考える研修会」は毎年8月11日を研修日と位置づけ、本年度で第三回の開催を終えている。
ビジョンの骨格は、①地域の教育振興に寄与する(目的性)②退職校長会が主催する(組織力・専門性)③8月11日、研修日(定着・継続性)④県教育庁北部教育事務所共催認可(公共性)⑤教育機関・団体へ呼びかけ(連帯性)⑥団体拡充(地域性)を目指すものである。

研修会の主題を『家庭・地域・学校の教育力の向上』とし、講演→パネルディスカッションと形式は毎回一貫している。自前の専門性を発揮する場が多々有り、
●会次第
●開催要項起案
●案内文書作成
●登壇者アドバイス等
がそれで、組織の体力に沿った独自色を発揮している。

発表は、家庭における育児論、保育所・幼稚園の交流行事紹介と協力依頼、公民館等による青少年育成に基づく地域活動の事例、新設した農業小学校(民)経営と地域に密着した内容である。

今後は、支部活動の調和を保ち、会員の創意工夫で子どもを育む姿勢を示し、県組織の支援を得、総力を挙げて第四回の研修会を迎えるようにしたい。

3、串間市「教育の日」
わたしたちは、自己を高め、人を思いやり、明るく豊かな生活が過ごせるよう、毎月一日を「教育の日」と定め、自己を振り返り、家族、友人、地域の人々と「ふれ愛」「認め愛」「磨き愛」ながら、ともに伸びる教育をめざす。次の三項目が重点事項である。
一、あしたの自分をみつめて
二、あたたかい家庭をめざして
三、あかるい地域をめざして

平成19年6月1日から施行されている。

4、今後の課題
会員の意識向上が先ず第一の課題、毎年四十名内外の新会員が誕生している。各地区の懇談会の中で意識を高めていきたい。

県関係機関との交渉、PTA、地域社会に対する「教育の日」の共通意識の向上を図っていくことが肝要ではないかと思う。

若手教員のニーズに応える研修会(報告)日常に役立つ課題解決のヒントを探ろう

東京都退職校長会主催、全連退等後援による「若手教員のニーズに応える研修会」が、平成22年12月4日(土)に、江東区立明治小学校で行われた。快晴の天候のもと、165名が参加した。

はじめに、全体会が体育館で行われた。続いて3つのラウンドテーブル(RT)に分かれて研究協議が行われた。RT1では、授業のポイント「わかる授業」について、RT2では、生活指導のポイント「児童・生徒理解を基本にした指導」について、RT3では、学級経営のポイント「学級担任の仕事」をテーマに協議が行われた。協議はワークショップ形式で進められた。

授業に関するRTでは、参加者が6グループに分かれた。1つのグループは現職教員3~4名、退職校長1~2名で構成された。まず、現職教員が課題を付箋に1項目ずつ書き出していく。短い時間の中で次々と書いていく。結構悩みを抱えていることが分かる。次に、それらを5項目にまとめていく。あるグループでは、導入、教材研究、個に合った指導法、授業展開のポイント、評価に関する課題が出た。その後、各グループごとに分類した項目についての発表が行われた。

続いて、各グループでそれぞれの項目についての改善策を書き出していくことになった。新人教員が多く、今度は先程のようには書き込みが進まない。退職校長が自分の経験談を語ることが多くなる。その後改善策についてグループごとの発表があった。

最後に、講師(都教育庁指導部小瀬和彦統括指導主事)より、「一人一人の子供を思い浮かべて授業研究をしていくことが大切だ。生徒が思考・判断で考えたことを表現できるような授業を行うよう心掛ける。評価では、その子の立場に立ってほめる。そうすると子供は喜んで次を考えるようになる。」との講評があった。

研修会最後の全体会では、RT1~3の代表によるまとめの発表があった。その後、各RTの講師からのまとめの講評があった。まず、「わかる授業」では前述の小瀬和彦指導主事が、「自分に問い返してほしい。自分に自信を持って、何回も問い返すことが大事だ。」と強調された。次に、「児童・生徒理解を基本とした指導」では、都教育庁指導部伊藤秀一統括指導主事が、「学校全体で、生活指導の良い面、学級経営の良い面を出し合ってみて、その中で学校として一番必要なものを共通理解しながら、もう一度再構築してみてはどうか」と提案された。最後に「学級担任の仕事」では、江東区教育委員会赤堀美子統括指導主事が、「子供たちはみんな、自分を認めてもらいたいと思っている。そのことを担任が受け止めて、その子に必要な手だてを講じてあげる。それを集団に対していかに理解させるかが学級経営だ」と話された。

今回は、若手教員と元校長とがグループを形成しての討議形式だった。若手教員が多数参加したことと、元校長が彼らへ自分の経験を語ることができたことで、とても有意義な研修会になった。

「この研修会に参加して良かった」という声が若手教員の中から多く聞かれた。

(文責 村山忠幸)

【PDF】地方の会報誌より

共済年金受給者団体幹事会に出席して(報告)
  福利厚生部長 前田徹

福利厚生部長 前田徹

平成22年12月8日「共済年金受給者団体全国協議会幹事会」が日本退職公務員連盟(日公連)の事務所で開かれた。

下条進一郎会長の「退職者の今後の人生とともに若い人たちの将来の生活に安心感がもてるように、筋道の通った年金制度改革が行われるよう皆で協力していこう」という挨拶があった。その後、鈴木専門員から「年金改革への動き」という講話があった。その要点は次の通り。

一 民主党のマニフェスト
二年前の衆議院選挙時に「転職しても手続きが不要となるよう年金制度を例外なく一元化する」と唱え、以下のことを計画している。

(1)同じ所得なら同じ保険料を負担し、それを基にする「所得比例年金を」創設する。
(2)消費税を財源とする「最低保障年金」を創設し、全ての人が七万円以上の年金を受け取るようにする。
(3)税と社会保障制度共通の番号制度を導入する。

二 新年金制度に関する検討会
平成22年3月8日に初会合があり、その後実務者検討チームで五回のヒヤリングを実施。6月29日に中間まとめとして七原則を出したが、その内容は現行制度と大きな差はない。

三 問題点及び課題
民主党の年金に関する考え方には次のような問題点がある。
①定着している現行制度を改革する理由が不明。
②年金の財源となる消費税の額が問題。
③無年金者・低年金者の取り扱い。
④全ての人が七万円以上の年金を受け取れる時期。
⑤専業主婦の保険料の取り扱い等十項目が示された。

四 社会保障・税に関わる番号に関する検討会
平成22年2月に内閣府に設置し番号制度の検討が始まった。6月29日に中間まとめとして次の三案が出された。

A案‥11桁の番号で税務のみ適用するドイツ型
B案‥9桁で社会保障、年金、選挙に適用するアメリカ型
C案‥10桁で税務、社会保障、住民登録、選挙、兵役、教育、諸統計に適用するスウェーデン型

11月11日に開催された会ではスウェーデン型の支持が多かったが、反対意見もあって、当面はアメリカ型を行い、段階的にスウェーデン型に移行することとなった。23年6月に番号制度の大綱をつくり、秋に法案を作成する予定である。

この他に鈴木専門員から「年金制度の改革を取り巻く各種フォーラム」が、藤田社会保険対策委員長から「新年金制度改革を取り巻く最近の動き」の講話があったが紙面の都合上省く。

中央教育審議会並びに特別部会を傍聴して(報告)
  教育課題委員長 田中昭光

教育課題委員長 田中昭光

一、第73回中教審総会報告
(平成22年12月24日)

高木文部科学大臣の答申に対する期待と教育改革に向けての決意が語られた後、以下の審議が進められた。

① 今後の学校におけるキャリア教育・職業教育においては、学校から社会・職業への移行や社会的・職業的自立などの課題を改善していくために、学校教育の役割が重く、幼児期から高等教育まで発達段階に応じたキャリア教育・職業教育を体系的に実施することが提言された。

② 大学分科会からは、教育
の質の保証と向上、機能別分化と大学間の連携の促進、教育研究の充実のための組織・経営の基盤強化について報告された。

③ 初等中等分科会特別支援
教育の在り方に関する特別委員会より、インクルーシブ教育システム構築に向けての特別支援教育の方向性、就学相談、就学先決定の在り方、特別支援教育の充実のための人的・物的な環境整備について論点を整理した概要が報告された。

④ その他、生徒の学習到達
度調査(PISA2009)の結果についての評価及び今後の取り組みについて、新学習指導要領の着実な実施が重要、平成22年度全国体力・運動能力等の調査結果について報告された。

二、第八回教員の資質能力向上特別部会
(平成22年12月17日)

取り組むべき基本方針として、教員が教職生活の各段階を通じてより高度な専門性と社会性・実践的な指導力を身に付けられるよう課題を踏まえつつ、教員養成、採用、研修の各段階について改めて点検し見直すことが提言された。

① 教員養成の在り方
教員養成の現状と課題、教員養成の改革の方向性、教職課程の質の保証

② 教員免許制度について
免許制度や種類、教員免許更新制

③ 採用と多様な人材の登用

④ 現職研修について
初任者研修、国や任命権者が行う研修、校内研修や自主研修の活性化等についてこれまでに審議したことが報告をされた。

三、第74回中教審総会報告
(平成23年1月31日)

三村会長より高木文部科学大臣に次の二件を答申した。

①「グローバル化社会の大学院教育について」

②「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」

その他、「教員の資質能力向上」「生涯学習・社会教育の振興」等今後引き続き審議会で討議する課題の経過報告がなされた。全連退では引き続き中教審の審議の動向や答申案について注目し、今後の要望・提言等に役立てていく所存である。