抜粋内容

年頭所感 「人間性」考 
 全国連合退職校長会 会長 戸張敦雄

提言:
・ひとりごと 
  全国連合退職校長会 上甲一光副会長(四国)
・存在感のある退職校長会
  全国連合退職校長会  冨永憲市副会長(九州)

全国校園長より:
・教育改革を進める全日中
   全日本中学校長会 会長 三町章
・問われる高校教育「質の保証」
   全国高等学校長協会 会長 及川良一
・共生社会の実現に向けて
   全国特別支援学校長会 会長 兵馬孝周

PDF 第6回 事務局長会報告

PDF 文部科学省大臣官房審議官 関靖直氏の講話と懇談

年頭所感 「人間性」考
    全国連合退職校長会 会長 戸張敦雄

全国連合退職校長会
会長 戸張敦雄

平成25年 癸巳(みづのとみ)の新年をお迎えのこと、心からお祝い申し上げます。

昨年の教育界は、いじめ問題で多くの情報が飛び交い、正に人間性が問われる姿の見られる年でした。

国も社会の光というべき子どもの生命・身体を守るために、子どもの「命」としっかり向き合い、いじめや学校安全等に関する総合的な取り組み方針をまとめ、学校や教育委員会等にいっそう積極的に支援していくことを決め、対応の強化を図りました。

今後、命のスペアはどこにもないことを心に留め、学校・家庭・地域社会が一丸となって子どもの命を守る取り組みが進展することを期待しております。

この時に当たり連合体である全連退は、全国52の退職校園長会の意向や要望等も貴重な情報と受け止め、教育尊重の気運を高め、我が国の教育振興にいっそう寄与していく方向性を再確認し、「人間性を備えた組織」として活動していく所存です。

組織の随所に人間性が見えるということは、組織人ひとり一人が人間性を備えていることが条件です。

その人間性、即ち人間として持つべきものが五つあると考えます。第一は、善き意思です。無条件によいものは善き意思です。

次に、思慮、知性が大切です。知力をもって熟慮し決断する能力です。的確な決断を短時間で下し得ることが重要です。

三番目に情緒といわれる様々な感情に知的な作用の加わった、より複雑な感情といえる豊かな情操です。

四番目には、知識・技能を挙げます。技術者が卓越した知識と技能で立派な仕事を成し得るように、長い間教育に携わってきた私たちの知識・技能を備えた教育力です。

最後に心身の健康です。健康であってこそ、行動に発言に説得力、迫力が生じます。

繰り返しになりますが、善意思を持ち、的確な思慮決断力、豊かな情操、教育力そして健全な心身を備えた会員によって構成された人間性の溢れる全連退を目標に活動することを希求しております。

今年の全連退は財務状況等を考えますと、相当厳しい予算編成になることも考えられますが、組織・機能のリニューアル等を図りながら安定した健全な運営に尽力いたします。

人生経験を通して私自身は、人間性のいっそうの開発に留意し努力いたす所存であります。会員各位のご協力、ご支援をお願いし、年頭のあいさつといたします。

提言:ひとりごと
   全国連合退職校長会 上甲一光副会長(四国)

上甲一光副会長(四国)

「提言」の原稿執筆の依頼を受けた。ただ、私の日頃の勉強不足のため、この欄は誰に向けて提言をするものなのかがよく分からない。政府等へか、全連退本部へか、それとも会員各位へか。そこが不明のまま書くため(本当は私個人の力量不足のためなのであるが)、焦点の定まらない文章となることをお許し願いたい。

私は今年度初めて副会長の任を仰せつかった。そこで感じたことは、全連退本部の役員の方々の教育の振興・充実に対する熱意の強さや識見の高さである。8月3日、今年度の「要望書」を文部科学大臣等へ持参した。その案を前もって本部で作成していただいていたのだが、本当に重要でよく練られたものばかりだと感心した。その中には、しごく当然ながら教育関係予算を他の先進国並みのGDP比5%を目標とすること、35人以下学級の拡大のため、教職員定数の標準等に関する法律改正なども盛られていた。

ところが、11月2日付けの愛媛県の地方紙によれば、財務省は全国の公立小中学校の教職員定数を今後5年間で一万人削減する独自案を発表したそうである。財務省は、少人数学級推進の効果を疑問視しているらしい。教育現場に携わる者や文部科学省の考え方とは真っ向から対立するものであり、大きな失望感を禁じ得ない。

そこで提言であるが、私たちの要望を直接財務省へ届けるような方策はないものだろうか?現職校長会等との連携やマスコミ、政治家等へのアピールなどにより私たちの声をより強いものにし財務省まで届ける。財務官僚との議論に持ち込めれば、現場を熟知している私たちの方に分があると思うのだが…。

提言:存在感のある退職校長会
  全国連合退職校長会  冨永憲市副会長(九州)

冨永憲市副会長(九州)

〇会員の帰属意識を高める
存在感を示すには先ず会員の意識を高めることに始まります。意識を高めるには各地区の退職校長会の責務を全うすることが基本になります。一市民、一県民であると共に一つの組織を持った地域社会に奉仕する一団体であるという根本精神を持って責務を全うすることにあります。

〇責務とは何か、
会員の親睦、福祉、教育支援の三大目的を持って活動を進めていくことです。

〇会員の親睦で留意すること
地域に居住する者同志がお互いに声をかけ合い、誘い合い生涯学習に励み、孤立感、孤独感を出さないように気をつけることです。高齢化が進むと同時に老々介護がある場合は、つとめて労わり合う気持ちを持つことが大事になります。

〇福祉の増進で気をつけること
叙勲は会員全員が受賞該当者であります。叙勲資料は全員が出せるよう留意しなければなりません。問題は集められた資料をどのように保管していくかということです。30年来の資料、膨大な書類の保管が問題になりパソコンのUSBメモリーに保管することになったが、各地区で漏れないように保管することが重要視されています。

〇教育支援をどのようにすすめるか
オープンスクール、研究公開に参加することもたいへん意義のあることですが、より意義のあることは子どもと接し活動をすることです。宮崎県日向市では農業小学校と銘打って会員と子どもの共同の農作物を栽培するというユニークな活動があり退職校長会の模範となっています。地域社会に存在感のある退職校長会であることをめざしていきたいものです。

全国校園長より:教育改革を進める全日中
   全日本中学校長会 会長 三町章

全日本中学校長会
会長 三町章

明けましておめでとうございます。今年度、特に次の三つのことを重点課題として取り組んでおります。

学習指導要領に基づく教育課程の適正な実施と課題の整理・発信

「生きる力」の育成という理念は変わりませんが、様々な改善事項があります。私たち校長は、これらが日々の授業で、どのように具体化されているかをしっかり見究め、教職員を指導していく必要があります。一方で、全面実施以前から懸念されていた、週の授業時間が増えることによる教育課程や生徒指導、特別活動などへの影響、教科間での授業時数のアンバランスとその対応等々、実際にどうであるか検証し情報発信するつもりです。

全日中教育ビジョンの検証と教育改革の推進

教育ビジョンを発表して3年が経ち、今年度中に一部改訂版を発行し、今後も「教育改革を進める全日中」として、学校からの教育改革に取り組んでまいります。

東日本大震災からの復興への継続的な支援

本会では他の支援団体への働きかけと、独自の支援を行っています。働きかけの成果の一つとして、ベルマーク教育助成財団による被災学校へ部活動等での生徒輸送用バス代援助の試行が実現しました。本会としては、義援金口座にお寄せいただいた全額を、岩手、宮城、福島の東北3県の支援に使わせていただきました。今後も継続的な支援について検討してまいります。

最後になりましたが、今後も全日本中学校長会の活動に、ご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

全国校園長より:問われる高校教育「質の保証」
   全国高等学校長協会 会長 及川良一

全国高等学校長協会
会長 及川良一

日頃より全高長に対するご支援ご鞭撻に感謝申し上げます。

最近、高校教育の目下の課題である「質の保証」に係る大きな動きがありました。8月28日、平野文部科学大臣(当時)から中教審に対し「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」諮問がなされ、高大接続特別部会が設置されました。同部会の目的は、高等学校教育、大学入学者選抜、大学教育の在り方を一体のものとしてとらえ、大学入学者試験の在り方を含めた大学入学者選抜の改善方策、そして「高等学校教育の質保証」「大学入学者選抜の改善」「大学教育の質的転換」を一体的に行うための基本的な方向性、高等学校と大学との連携強化のための方策について審議することです。

高等学校と大学との教育上の接続を踏まえた大学入試制度改革が俎上に上ったのです。目指す新たな大学入試制度は、学習意欲の喚起、幅広い学習の確保、学力の状況の把握といった高校教育の「質の保証」を前提とするものです。

部会第1回の冒頭、高等教育局長と初等中等教育局長が並び立って挨拶しました。この種の会議には今まで見られなかった光景で、大学入試制度改革に本腰が入った感がありました。

しかし、大きな制度改革ですから相当な困難が予想されます。ただこの機を逃せば、長らく指摘されてきた大学入試に左右される高校教育、といった現状から抜け出すことはできないように思います。今後は退職校長会の皆様と一層の連携を図りながら、高校教育改革に取り組んで参りたいと考えておりますのでご指導の程よろしくお願い申し上げます。

全国校園長より:共生社会の実現に向けて
   全国特別支援学校長会 会長 兵馬孝周

全国特別支援学校長会
会長 兵馬孝周

本会は、昭和38年10月に結成された「全国特殊学校長会」が前身であり、従来の盲・聾・養護学校が特別支援学校へと転換された「学校教育法等の一部を改正する法律」が平成18年6月に成立したのを機に、平成19年6月に『全国特別支援学校長会』と改称し、昨年、50周年を迎えた。

さらに、平成19年の学校教育法の一部改正により「特殊教育」から「特別支援教育」へと転換されて今年度は6年目を迎えた。

国においては内閣府に障害者権利条約の批准のための障害者制度改革会議が設けられ、文部科学省においては中央教育審議会初等中等教育分科会で特別支援教育のあり方に関する検討委員会やその中に設けられた合理的配慮や基本的教育環境のワーキンググループでの議論が行なわれ、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進についての報告書がまとまり、平成25年度文部科学省の概算要求にもその内容が盛り込まれた。

本会は、このような国の動きに対応し、特別支援教育の理念や特別支援学校が果たすべき役割等について議論を重ねて内容を確かなものにするとともに、明確なビジョンをもって特別支援教育の振興を図るために、全国特別支援学校長会としての課題と取り組みを共有する『全特長ビジョン(共生社会の礎を築く)』を策定した。

今後一層、積極的に他の校長会や障害者団体、支援団体、研究団体等と連携しつつ、特別支援教育の推進を図っていくことが益々重要になると考えている。

【PDF】第6回 事務局長会報告

【PDF】文部科学省大臣官房審議官 関靖直氏の講話と懇談