抜粋内容
年頭随想 全国連合退職校長会 会長 土橋荘司
全国校園長会会長より
新たな教育元年 全国高等学校長協会 会長 島宮道男
副会長会の報告
第2回理事会報告
会旗制定の経緯と仕様
全国校園長との懇談会
教育情報
現役教員の研修会を開催
年頭随想 全国連合退職校長会 会長 土橋荘司
全国連合退職校長会
会長 土橋荘司
今年も明けましておめでとうございます。昨年も台風などの自然災害がつぎつぎに発生し、日本列島だけでなく外国にも同じような被害を残しました。人間がこれに対して防衛に手を尽くしても力及ばず、人々は自然の偉大な力を身をもって体験し、毎日を平穏に暮らすことの意味を深く感じたことでした。ところが、人間どうしの争いは絶えません。また、食品表示の不正などの問題が続発し、それによって、信頼で結ばれた社会の伝統が失われようとしています。このような社会になったことはまことにさびしい限りです。
こう見てくると、現在ほどものを考えるための基軸が失われ、従ってそのための哲学的な深い思考が要されるのに、哲学とは何かという輪郭がはっきりしなくなっています。このような問題はわが国だけのことではなく、世界中の多くの国や文化についても言えることです。
現在では西欧でも「哲学の死」とか「無前提の知」とか言われて模索が続きます。どうかこれからの人たちの努力により望ましい方向に進むことを私は期待しています。
また最近の事件を見ると、教育の面では児童・生徒の尊い命を守る課題があります。低年齢の少年事件が続発しています。例えば生徒間の金銭の問題で親を殺すなど、人間として子供としてあるまじき事件が起きています。個人を育てるためには伝統を共有する文化共同組織体の力が重要であることを痛感します。
十月の始めに関東甲信越地区連絡協議会が新潟の長岡市で開催されました。二日間の熱心な討論で種々の問題が論じられ、顔を合わせて語り合うことの意義を感じました。中越地震も三年経過して、山古志村等の復興が進められ、立派な建物、道路も出来ていましたが、まだ河の中に家の二階が浮かんでいる気の毒な家もありました。帰りに山本五十六記念館をたずねて感激しました。館内に長官塔乗機の大きな穴のあいた左翼がありました。島で十一名がなくなっています。山本五十六は大戦中軍艦長門から小学校の恩師、渡辺先生に六年間続けて感謝の気持ちを手紙に書き綴っています。また、山本五十六の行動は常に戦争を回避し日本と世界の平和を実現する道を求めていました。その偉大な人物像にただ感涙しました。
全国校園長会会長より
新たな教育元年 全国高等学校長協会 会長 島宮道男
全国高等学校長協会
会長 島宮 道男
全国連合退職校長会会員の皆様、明けましておめでとうございます。
一昨年末に教育基本法、昨年六月には学校教育法、教育職員免許法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律が改正されました。この改正を受け、十月末の中教審教育課程部会において、新学習指導要領の中間まとめが了承されました。今後、細部の詰めをおこない、年度内に告示される予定ですが、高等学校については年度を越す気配です。
この学習指導要領の改訂に際して、小・中・高・大それぞれの学校段階における「教育の質の保証」が重要なポイントになっております。この「教育の質」を保証する仕組みとして、小・中学校では「学力調査」が挙げられておりますが、高等学校や大学においても何らかの新たな仕組みが求められているところです。この新たな仕組みを巡って、様々な議論が行われておりますが、生徒の多様化が著しい高等学校では学校ごとの「教育の質」も多様であり、一律の基準で評価することには無理があります。また、学習指導要領では共通性と多様性のバランスに配慮しつつ履修主義が貫かれているわけですが、この「教育の質の保証」についての議論や教育再生会議での「高等学校卒業資格認定試験」・「大学入学資格認定試験」などの意見は、修得主義的な考えのように思われてなりません。
今般の教育関連法の改正、学習指導要領の改正において、義務教育についての議論はほぼ尽くされたようですが、高等学校については不十分であるように思われます。中学生の98%が高校に進学し、大学が全入時代を迎える現在、高等学校教育の在り方についてきちんとした議論が尽くされるよう願ってやみません。
副会長会の報告
会旗制定の経緯と仕様
全国校園長との懇談会
全国校園長会との懇談会
全国校園長会との懇談会は、例年五校種の全会長に全連退の事務局にお集まりいただいて、行われておりましたが、十分な協議ができませんでしたので、今年度は、各校園長会とそれぞれ単独に実施することになりました。
以下、各校種別に懇談会の状況の概略を報告いたします。
(懇談内容の文中の◎は校園長会、○は全連退の発言)
全国国公立幼稚園長会
期 日 12月22日(木)
時 間 午前10時30~12時
会 場 練馬区立さくら幼稚園
出席者 (国公幼)会長 岡上直子
事務局長 深町芳弘
(全連退)三 名
受領資料
「幼稚園教育の現状」
「平成二十年度 予算に対する要 望書」
「未来につなぐ幼稚園百三十年の あゆみ」
懇談内容
◎国公幼の会員数、園児数の状況。 園および園児数の減少状況とその原因。
◎(幼稚園教育について)
・考えることと技能を遊びをとお して身につけさせる。集団メンバーの意識を養い規範意識を。
・教育要領は、達成目標でなく方向目標である。
・小学校の基盤としての位置付けが明確にされた。
(現在の課題)
・民営化、三年保育と幼保一体化、教員研修、教員の指導力不足。
(国への要望事項)
・学級定数、教員への処遇、耐震構造、幼保一体化の進め方、認定保育所と認定子ども園の問題、教 員・園の評価、教員研修への参加。
(全連退への要望)
・民営化が強く推進されるが公教育(公立)の大切さを訴えてほしい。
(意見交換)
○幼児教育専門の指導主事をどこに配置してほしいか。
◎県教委に置くことにはなっているが都では区市に是非。
○区の指導主事は訪問してくれているか。
◎園内研修には要求すれば来る。指導主事が幼児教育を知らない。
○教員の身分上の不安定は県費職員にしなければ。
◎採用の任免権が市町村なので、県との関係でできるか。
○全連退が要求する方向としてはどうか。
◎公立の大切さと一致する。PTA連合も公立を要求している。要望はありがたい。
○予算要望書の条件整備を中心に要望する。
○認定保育園の管轄はどこ。
◎文科省と厚労省。厚労省の方が予算は大きい。
○子育て支援は、預かり保育になり、子育て放棄になりはしないか。
(まとめ)
幼児教育の充実・振興は、条件整備である。全連退の国への要望に生かしていく。
全国連合小学校長会
期 日 平成19年10月30日(火)
時 間 午後3時~5時
会 場 全連小事務局
出席者 (全連小)会長 池田芳和
副会長 小滝岩夫
対策部長 塩澤雄一
調査研究部長 向山行雄
事務局長 大内敏光
(全連退) 五 名
受領資料
「学習指導要領への提言2」
「十九年度文教施策・予算要望と 二十年度概算要求」
「教育管理職等の任用・育成に係 わる検討について」
「小学校教育の充実に関する文教
施策並びに予算についての要望書」
懇談内容
◎(全連小について)
職能集団の使命として学校教育 の充実。信頼される学校づくり (マネジメント)
◎(各資料についての説明)
○教育が行政の論理ですすめられていることが問題。家庭教育については関係のある省庁で横断的な組織が必要。
◎教育基本計画の立案に教職関係者がいない。要望書には盛り込むべき内容をまとめてある。
◎放課後子どもクラブが急速に広がっている。
○親が子育てをできるようにすることが基本。
○文科省は教育課程の構造化がわかっていない。
全連退は小学校の英語教育には賛成ではない。
◎現在外国人講師が約三千人いるが、母国語や財政に問題があり、 保護者からの批判もある。
◎パソコンの利用をといっている。スキルの問題もある。
○文科省はコミニュケーションだといっているが、日本語の方ができていない。
◎日本語と英語の文法の違いから文化の違いが判るかも。
○(全連退の「中教審への意見・要望」について説明)
◎授業時数は学校裁量にしてほしい。
◎「総合的な学習」は学習指導要領の総則から別な章になり、目標が示される。
○生活料と総合との関連が不明確。 「人間として生きていく力」は学力だけではない。
◎総合は国民が自分の生き方を考えることからできたが少し振りすぎている。
○全連退の国への要望として
・第八次教職員改善計画
・校長の学校経営権
・教育課程の構造化
全国高等学校長協会
期 日 平成19年 11月28日(水)
時 間 午後3時~4時半
会 場 全高協事務局
出席者 (全高協)会長 島宮道男
事務局長 荒田雅子
(全連退) 四 名
○(あいさつ)
今回の懇談会の趣旨説明
全連退出席者の紹介
懇談内容
◎・高校教育の学習成果が問われている。
・学習指導要領は大きく変わってはいない。
・土曜日の活用は教員には負担。
○大学入試に資格テストをと言われているが。
◎・共通性とバランス性を図ったと言う。
・中学で世界史をもう少しやれば、選択履修になる。
・理科の三科目は負担が大きい。
・大学は資格テストを要求。
・専門学校の生徒の進学にもう少し理解がほしい。
○・教育基本法が改正されたが高校には触れていない。
・多様化している生徒の6割が進学、学力差が大きい生徒の 受け入れが課題。
・必履修の教科指定はあっても科目は選択にしてほしい。
・卒業認定と大学資格の2つの試験はどうやるのか。
○(全連退の資料の説明)
○週五日制と土曜日のことは。
◎土曜日の活用は、運営を弾力的 に考えさせてほしい。
○(日比谷高校の事例紹介)
◎文科省に高校科がない。他に準じてとなっている。
県と高校のむすびつきが強いところは、いろいろな試行をしいる。
◎今回の提示はこの程度はやってほしいという願いではないか。
○いかなる日本人を育成するのかが示されていない。
◎必履修に情報があるが、ツールとして扱いたい。
◎教員定数増の要望を出しているが、財務省が7%減を盾にしている。
◎特別支援の生徒が高校に来ると教員増が必要。
○大学入試と望ましい出口は。
◎明確な目的を持たせて、大学の選択をさせたい。
○大学は専門教育を受けられる生徒を責任をもって教育して出す ことが大事だ。
◎センター試験は、選抜なのか資格(到達度)なのか。
○資格試験として行うことで勉強する生徒もいるのでは。
○受けないでも入学できる。
◎公立高も私立高も大学も頑張ら なくては。 全国校園長会との懇談会は、例年五校種の全会長に全連退の事務局にお集まりいただいて、行われておりましたが、十分な協議ができませんでしたので、今年度は、各校園長会とそれぞれ単独に実施することになりました。
教育情報
中教審 初等中等教育分科会教育課程部会 梶田叡一部会長より「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」に対する本会の意見を求められ、土橋会長が発表しました。 〈約10分間〉
その全文は次のとおりです。
全国連合退職校長会では、主体性のある日本人の育成を重要な視点として、様々な提言・意見具申をしてきました。改正された教育基本法・学校教育法により規定された教育の目的・目標の達成に向け、また、学校や子どもたちが抱える諸課題の分析や解決策を柱に、学校教育の根幹である学習指導要領の改訂に向け審議されていることに敬意を表し意見具申します。
1.教育理念に基づく学習指 導要領の改訂
生きることを意識し、よりよく生きたいと願い、その目標の実現に努力するのは人間のみである。この営みの中で人間は様々な文化を創造し、文明を発達させ今日に至っている。また、それは、まさに一人一人の自己の創造であり、そこに人格の完成もある。
このような観点からも、今次「まとめ」に示された「生きる力」の教育理念による一貫性のある学習指導要領の改訂は極めて重要である。更に、「創造性の育成」も含め、学習指導要領を改訂すべきである。
今次教育改革の柱は、「言語活動の充実」、「理数教育の充実」、「道徳教育の充実」である。授業時間の増加に併せ教科科目の整理、目標やねらい、学習構造の明確化、教科間の横断等について、新たな提言がなされたことを評価する。
学習指導要領の理念や内容が各学校の教育課程の編成に生かされ、計画・実践され成果を挙げるためには、学習指導要領の解説書等によって一層の充実と活用を図る必要がある。
2.教育課程の枠組みについて
(1) 義務教育の授業時数
学校週5日制の下では、各学年「週1コマ」の増加が限度である。各学校の創意工夫を期待する前提として、授業日数の規定がなされることが必要であり、年間の授業日数を200日から220日とすべきである。
(2) 総合的な学習
体験的な学習活動、教科等を横断した問題解決的学習や探究活動が重要な教育活動であり、その位置づけは章として位置づけされたが、具体的な目標・内容・方法を明確にする必要がある。
(3) 外国語(英語)活動
小学校の高学年より外国語(英語)活動が導入されることになるが、実施される前に解決すべき諸問題として、指導のねらいや内容の明示、教員の指導力の養成、外部人材(ALT)の確保等の条件整備が絶対に必要である。条件整備がなされない段階での実施は避けるべきである。
(4) 高等学校の必履修教科
現行と変わらないことはやむを得ない。しかし、中卒者の高校全入に等しい状況下にあって、学力差による高校教育の多様化が生じている。その現実に配慮し、科目の単位数は指定しても、科目の選定は各学校の自由選択にすべきである。
(5) 社会の変化への対応の視点から教科等を横断して改善すべき事項
横断しての指導内容については、本来の教科指導に支障をきたさないよう配慮すべきである。
3. 共通する諸課題並びに教育条件の整備
(1)道徳教育
義務教育における道徳の時間は、現行の教育課程上の位置づけとすべきであり、道徳教育の充実のためには、指導体制の充実が喫緊の課題である。各学校への道徳主任の必置は勿論、地区教育委員会(市町村も含め)に道徳教育を専門とする指導主事の配置、それらの者の研修・研究にも国としての施策が必要である。
高等学校における道徳教育の在り方については十分に検討され、実効性のある施策を講じられたい。
なお、指導内容の発達段階による重点化や使用する資料の開発や精選が必要である。
(2) キャリア教育の推進
進路指導は、中学校の学級活動の内容の一つとして位置づけられているが、キャリア教育として、小・中・高を通して実施されていくべきものである。進学・就職という狭義の進路指導ではなく、一人一人が自分の人生を考える教育としての指導目標・内容を具体的に示すべきである。
(3) 部活動の在り方
教員の教育課程以外の活動として行われている部活動の教育的な意義・役割・目標を学習指導要領に具体的に記述されたい。また、部活動を担当する教員の勤務の在り方や処遇の改善を計画的に推進すべきである。
(4) 教職員定数の改善
教員は日常的にこどもたちと向き合うことにより、子どもたちの成長を促す使命を担っている。現状の窮状を認識され行政優先の学校教育の改善や教職員定数の増加を図られたい。
特に、特別支援教育に関しては、専門的知識、資格を有する教員の配置が必要である。
(5)教科書・教具等の充実
現状の教科書は基礎的・基本的な内容の理解・習得に不十分であり、発展的な内容の記述も子どもたちの学習意欲を引き出すものとなっていない。興味・関心を持たせる教科書の工夫・充実が必要である。また、理科実験に要する施設や教具、図書館の蔵書の充実と司書教諭の全校配置、情報機器の充実などの条件整備を図られたい。
4.家庭・地域等の教育力の 低下への対応
学習指導要領の内容等に直接かかわりはないが、家庭や地域の教育力が低下し、不当な要求が学校に求められることも多く、それが学校が本来なすべき教育活動に支障をきたしている。教育基本法第10条(家庭教育)・第13条(学校及び地域住民等の相互の連携協力)について、より具体的に内容を示すような方策を検討し、学校、家庭、地域住民等のそれぞれの果たすべき役割と責任を明確にすることが必要である。