全国連合退職校長会(全連退)

設立 1965年(昭和40年)6月10日
Update 2014年04月10日
Renewal 2014年04月01日
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全 連 退 情 報      平成10年10月31日 第2号
「総合的な学習の時間」の創設に当たっての意見表明
全国連合退職校長会は平成10年7月29日の「教育課程審議会」の答申を検討したところ、緊急に意見を表明することがらがあると判断し、常任理事会の検討を経て、下記の意見文を公表いたしました。

教育課程審議会は、平成8年8月、文部大臣から「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」諮問をうけ、ほぼ2年に亘る審議を経て、平成10年7月29日に、その「答申」を、文部大臣へ提出した。
  我が「全国連合退職校長会」は、この間の同審議会の会長をはじめ委員各位のご労苦に、心から敬意をあらわするところである。
  我々は、今次「答申」の大筋について賛意をあらわするが、創設される「総合的な学習の時間」について、やがて告示、公表される学校種別ごとの「学習指導要領」並びに「指導書」の内容を視野に据え、意見を申し述べる。

1. 創設される「総合的な学習の時間」の展開等について。
  学校の使命の第一は、「教科(科目)教育を充実し、その基礎・基本を確実に児童・生徒に習得させる」ことである。完全学校週五日制を目指してとはいえ、現に、学校に勤務している教師の最も得意とし、また、国際比較でも先進諸国に勝る成果を上げている教科(科目)の授業時数を削減してまで、「総合的な学習の時間」を創設した趣旨等に、未だ釈然としないものがある。

 また、「総合的な学習の時間」は、各学校が学校や地域の実態などに応じ、創意・工夫を生かし、児童・生徒のニーズを尊重して課題を決定し、学習活動を展開するものであり、国が目標、内容等を各教科と同様に示すことを避ける考えを示しているが、各学校の現状を考えたとき、それで「ねらい」どおりの指導計画が作成され展開されていくか、危惧するところである。

 さらに、「総合的な学習の時間」の学習活動が円滑に展開されるためには、各教科(科目)の基礎的・基本的な内容の理解・習得が十分であることが根底になければならない。このことを踏まえ、今次改善の目玉といわれる「総合的な学習の時間」の在り方のみに目と心を奪われてしまうことのないよう、教育における「流行」に対する「不易」な面の重要性を認識し、確たる信念を持ってことに当たることが必要である。

2.「総合的な学習の時間」の創設に係る、教育諸条件の整備について
  国及び各都道府県・市町村の教育委員会及び教育研究機関は、「総合的な学習の時間」の創設に当たり、ハード面、ソフト面に亘る教育諸条件の整備に全力で当たらなければならない。

(1) 各学校における「総合的な学習の時間」の成否は、校長を中心とした教師の力量に負うところが大きい。そのため、「総合的な学習の時間」の「背景」や「趣旨」等についての研修会を開催し、その徹底を図る必要がある。さらに、大学などの教育養成課程において「総合的な学習の時間」の指導計画の作成やその指導に関する授業を体験的学習を含めて実施する事も必要である。

(2) 各学校における「総合的な学習の時間」の計画作成、展開などに不可欠なものの一つに、「良質で多様な教材や、教材に関する情報」がある。その情報を各学校に提供し、学校での計画作成などを支援・援助する仕組みを構築し、周知する必要がある。

(3) 小学校、中学校、高等学校などにおける各教科(科目)などの教育内容が厳選され、指導時数等が削減されてはいるが、「総合的な学習の時間」の指導計画の作成や実施に複数の教科の教師が関わることから、持ち時数の増加が予想される。また、情報の収集を主として行う教師の配置や、情報センターとしての学校図書館への司書教諭の配置も望まれる。したがって、教員定数を根本的に見直し、小学校、中学校については、「学校教育法施行規則」第22条、第52条の基準を上回る教諭の配置を、高等学校においても、「公立高等学校の配置、適正配置及び教職員定数の標準などに関する法律」に示される教職員定数の基準を上回る教諭の配置が必要である。

(4) 各学校が、「総合的な学習の時間」を自由に展開することに耐え得る学校内外の施設・設備を、各省庁、都道府県・市町村をはじめ民間教育機関等の総力を挙げて整備する必要がある。
 

3.「総合的な学習の時間」の実施後、各学校の「教育課程実施に関する評価」を計画的に行う必要がある。
  新しい学習指導要領に基づき実施される「総合的な学習の時間」の状況を、時期を決めて、国が定める評価基準により、各都道府県・市町村の教育委員会及び各学校において、それぞれ評価することが極めて重要である。
  その評価の結果を集計・分析し、公表すると共に、改善点を発見した場合は、速やかに勇気をもって改善することが大切である。

 おわりに、創設される「総合的な学習の時間」を充実していくためには、各都道府県・市町村の教育委員会が条例等の整備を含めて、各学校の「総合的な学習の時間」の指導計画に基づく学習活動を、全面的に支え、応援していくことが肝要である。また、高等学校、大学の入学者選抜制度(入試)の大胆で、しかも抜本的な改革も不可欠であることを付言する。

―以上―